さて、薬の名前の話の続きです。
グラクソ・スミスクライン(GSK)社の、ディスカスに替わる新しい吸入器・エリプタには、5種類のラインナップがあります。
ICS(吸入ステロイド薬)、LABA(長時間作用性β2刺激薬)、LAMA(長時間作用性抗コリン薬)が、単剤で使用されているもの、もしくは2剤ないし3剤を組み合わせたものですが、それらの商品名・薬効を混同してしまって覚えられないので、「名前に何らかの意味が隠されているのでは?」と思い、調べてみました。
(エリプタ5種。画像はお借りしました)
①レルベア(RELVAR)
GSK社のICS/LABAであるアドエア(ADOAIR、欧米での商品名はADVAIR)の後継=発展型。アドエアは、ADVANCED + AIRなのでしょうか。そしてレルベアは、関わりのあるアドエアにちなみ、名前を似せたのでしょうか?(RELVANT=関連する + AIR ⇒ RELVAR) なお、レルベアの欧米での商品名はBREOというようですが、気管支(BRUNCHUS)からきているようです。
②アノーロ(ANORO)
LABA/LAMA。ANOROは、スペイン語で「恋しい」「寂しい」。呼吸器疾患の患者さんにとって、アノーロは手放せない恋しい人、家族や友人なのでしょうか? ラテン系の響きで、名前がアミーゴ=友達に似ているので、LABAとLAMAは友達!アミーゴ!アノーロ!とでも覚えることにします。
③アニュイティ(ANUITY)
Nが1つ多いANNUNITYは、英語で「年金」だそうです。年金→安定した収入→日常生活を安定させる薬、とでもいうのでしょうか? 要は、GSK社のICS、フルタイドの発展型ですが、ステロイド薬は昔からあるので今さら感があって、退屈、アンニュイ→アニュイティ、とでも覚えることにします。
④エンクラッセ(ENCRUSE、欧米での商品名はINCRUSE)
LAMA。CRUSEは、英語で「壺」。なるほど、楕円形のエリプタは壺のように見えなくもないので、接頭辞のENをつけ「壺に入れた」ということでしょうか? 字面からは抗コリン(ANTICHOLINE)という印象を受けるので、LAMAを連想できなくはないですね。
⑤テリルジー(TRELEGY)
LABA/LAMA/ICSの3つの合剤なので、THREE + LEG + Y、すなわち「3本の脚」というのでしょうか? 字面からは一番、薬効をイメージしやすい気がしますね。
医学薬学は日進月歩、新しい医薬品名を耳にすることもしばしば。暗記ものの薬学用語をこじつけや語呂合わせを考えて詰め込んでいた、無軌道な学生時代を少し思い出した次第です。
(薬剤師:岡部 正史)