小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」を含むサプリメントを摂取した消費者に腎障害などの健康被害が起こり、これまでに5人もの死者が出たと報じられています。
主な商品である「紅麹コレステヘルプ」は、「悪玉コレステロールを下げる」と銘打った、同社の機能性表示食品。
機能性表示食品は健康食品の一つですが、特定保健用食品、いわゆるトクホとは違って臨床試験や国の審査は必要とされません。メーカーが製品の有効性を証明した研究論文を1つでも添えて届け出れば、「〇〇〇〇を改善する」などの機能をうたって販売できるものです。
一方、コウジカビの菌が作る麹は、醤油や味噌、酒の製造には欠かせない原料です。紅麹も古くから食品に用いられてきました。悪玉コレステロールを下げる紅麹って、なに?ちょっと調べてみました。
紅麹サプリメントの有効成分は、モナコリンK=ロバスタチン。コウジカビの仲間から発見され、米国のメルクが高コレステロール血症の治療薬として商品化しました。続いて日本の三共(現:第一三共)もプラバスタチンを商品化し、のちにファイザーもより強力なアトルバスタチンを開発・販売しています。
薬剤師的には「スタチンだもの、そりゃ下がるでしょ」という感じですが、疑問に思うのが、評価の定まっている医療用の薬とほぼ同じものをなぜわざわざサプリメントとして売るのでしょうか? 医療用だと保険適用となって国の負担がかかるから? 健常人が使うサプリメントなら市場規模も拡大できるから? 成長戦略?
それはさておき、今回は、想定しない成分(プベルル酸など)の混入が疑われていますが、そもそも原材料を製造する小林製薬の大阪工場では「GMP」という、品質管理に関わる規準を取得していなかったとのこと。
また、紅麹の製造に用いた菌が「シトリニンというカビ毒を生成しないものであることはゲノム解析で証明された」と小林製薬は公表していますが、他のカビ毒については確認していなかったのか? もしくは別の菌が混入して汚染され、未知の毒性物質が産生されたか? いずれにせよ、管理が甘かったことには変わりがありません。
さらに言えば、医療用医薬品であれば、もし万一腎障害などの健康被害が生じたとしても、診察の中で早期のうちに治療できた可能性があります。
それにしても、健康を志向してお金もかけたのに、かえって健康を損なうって・・・どうなんでしょう。機能性表示食品という制度自体の見直しが必要なのではないでしょうか。
(薬剤師:岡部 正史)