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薬剤師ブログ

薬剤師によるブログの更新を行います。

2024.02.29

認知症治療薬・レケンビとは?

 

2月は受験シーズン。入学試験や定期試験、国家試験なども目白押しですね。
 

自分もかつては試験(追試を含む)をいっぱい受けたものですが、記憶力が相当落ちていることを痛感する今日この頃です。
 

中高年の方であれば少なからず、記憶力の衰えが気になるところ。今回は、アルツハイマー型認知症を原因から治療する薬として期待される、レケンビ(一般名:レカネマブ)についてとりあげます。

まずはアルツハイマー型認知症のおさらいから。

原因から進行について、いまだ不明な部分も少なくありませんが、アミロイドβというタンパク質が脳内で徐々に塊となって神経細胞を死滅させていき、認知機能が低下していくというもの。

アミロイドβのほかにも、タウタンパクという別の物質が関与する神経原線維変異という病変も、疾患との関連が強く疑われていますが、レケンビはアミロイドβに標的とし、病気の進行を予防しようという薬です。

病態とレケンビの働きを図示してみるとこうなります。(いらすとやさん、いつもありがとうございます)

 

 

有効性はどうでしょうか。2週間に1回のレケンビの点滴を原則18カ月間行い、認知症の進行を平均で7.5カ月遅らせた、というデータが出ていますが、気になったところがいくつかあります。

① 軽度の認知症でないと使用できない
2つの認知機能検査をおこない、MMSEという検査で22~30点(軽度認知障害の疑い)、かつ、CDRという検査で0.5または1(認知症の疑い、または軽度認知症)という、認知症がまだ軽い段階でないと使用できません。進行してしまった状態では効果が見込めないのでしょうか。

② 脳への副作用に特に注意が必要
ARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる、脳血管の周りに水がたまる、細かい出血が起きる、鉄がたまる、などの事象がみられることがあります。MRI等を定期的に行って慎重に治療の継続を判断する必要があるようです。脳の病変などの既往があると、投与できない可能性もあります。

③ 費用が高額になる
18カ月の間、定期的に2週間に1回の点滴を受け、診察や検査もおこなうと、かかる医療費は10割で500~600万円ほど。ただし、高額療養費制度が適用されると、3割負担の方であっても18カ月の自己負担は90万円ほどに抑えられます。

このように、認知症に広く使用できる薬剤というわけではないようですが、認知症のある方やそのご家族にとっての救いの手となることを期待します。

さて、厄介者のように見えるアミロイドβですが、眠っている間に脳から除去されること、睡眠不足での脳では蓄積しやすいことがわかっています。

レケンビの名前の由来は、レカネマブ + 健美 だそうですが、しっかり眠ること、血圧やコレステロールの上昇を抑えることなど生活習慣にも気を配って、すこやかな美しい脳でありたいものですね。
 

(薬剤師:岡部 正史)

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