1つの医薬品には、市場に出回る製品としての名称「商品名」と、構造や含有量の定まった化学物質としての名称「一般名」の、2つの名前が存在します。
学術的なルールの下で定められる一般名に対して、メーカーが名づける商品名は、効能、謳い文句をイメージしやすい、平易な名前がつくことも少なくないようです。
有名なところでは咳止めの「メジコン」は、MEDICALのメジと、コンコン(咳込む音)、からネーミングしたとされます(ちなみにメジコンの一般名は、「デキストロメトルファン臭化水素酸水和物」)。
また、抗インフルエンザウイルス薬のタミフル(TAMIFLU)は、一般名の「オセルタミビル(OSELTAMIVIR)リン酸塩」のTAMIと、インフルエンザ(INFLUENZA)のFLUから命名されています。
最近の医薬品で言えば、ファイザーの抗コロナウイルス(COVID-19)ワクチンであるコミナティ(COMIRNATY)は、COVID-19、mRNA、コミュニティ(COMMUNITY)、免疫(IMMUNITY)という用語を組み合わせた、とされています。
一時期、話題になった国産の抗ウイルス薬・アビガン(AVIGAN)はどうでしょう。その文字列を分解すると、
A(=ANTI:対抗する)+ VI(=VIRUS:ウイルス)+ GAN(「丸薬」のガン??)
開発元の富山化学工業が、霊験あらたかな「〇〇〇〇丸」と名付けたかったのでしょうか?
後編に続きます。
(薬剤師:岡部 正史)